🌿 こころの相談室内科医コラム

上司に叱られた夜、眠れないのはなぜか――内科医が教える「ストレス不眠」の仕組みと対処

内科医 前川 出まえかわクリニック)|2026年7月5日

「布団に入っても、今日言われた言葉が頭の中でぐるぐる回って眠れない」――内科の外来で不眠の相談を受けるとき、話をよく聞くと背景に職場の人間関係がある、というのは非常によくあることです。

まず知っていただきたいのは、これは意志の弱さでも、心が弱いせいでもないということです。

眠れないのは「体の警報」が切れないから

人間の体は、脅威を感じると交感神経が優位になり、心拍数を上げ、筋肉を緊張させ、脳を覚醒させます。太古の昔なら敵から逃げるための仕組みですが、現代では「上司の叱責」も脳にとっては同じ脅威として処理されます。

問題は、この警報システムには「もう夜だから切る」というスイッチがないことです。嫌な出来事を思い返す(反芻といいます)たびに、脳は「まだ脅威が続いている」と判断して警報を鳴らし続けます。つまり眠れないのは、体が正常に働いている結果なのです。

やりがちだけど逆効果な3つの対処

今夜からできる3つの対処

  1. 頭の中身を紙に書き出す――寝る1〜2時間前に、腹が立ったこと・不安なことを5〜10分、誰にも見せないつもりで書きなぐります。頭の中の反芻を「紙の上」に移す作業で、筆記開示という研究的裏付けのある方法です。
  2. 眠くなるまで布団に入らない――眠れないまま布団で粘ると、脳が「布団=考え事をする場所」と学習してしまいます。眠気が来てから布団に入る、眠れなければ一度出る、が原則です。
  3. ゆっくり吐く呼吸――4秒吸って、7秒止めて、8秒かけて吐く。吐く息を長くすると副交感神経が優位になり、警報システムが静まりやすくなります。

受診を考える目安

眠れない日が週3日以上、2週間以上続く。日中の眠気やミスで仕事に支障が出ている。気分の落ち込みや食欲低下を伴う――このあたりが受診のラインです。心療内科に抵抗があれば、かかりつけの内科でかまいません。甲状腺の病気など、体の側の原因が隠れていることもあり、その確認も含めて相談できます。

不眠は「悩みが体に出るサイン」の中でも最初に現れやすいものです。眠れない夜が続いたら、根性で乗り切ろうとせず、悩みの正体を整理すること・体を休ませることの両方から手をつけてみてください。