「ストレスで胃が痛い」は気のせいではない――脳腸相関という医学
「胃カメラでは異常なしと言われました。でも胃が痛いんです」「大事な会議の朝は必ずおなかを壊します」――内科外来で毎週のように聞く訴えです。
検査で異常がないと「気のせい」「ストレスでしょう」で終わりにされて、傷ついた経験のある方もいるかもしれません。しかし医学的には、これは気のせいではなく、きちんと名前と仕組みのある状態です。
脳と腸は「専用回線」でつながっている
脳と消化管は、自律神経とホルモンを介して双方向に影響し合っています。これを脳腸相関と呼びます。緊張すると口が渇き、胃が締め付けられ、腸が過剰に動く――ストレスという「脳の事件」が、そのまま「腸の事件」になるのです。
逆方向もあります。腸の不調が脳に伝わり、不安や気分の落ち込みを強めることも分かってきています。「胃腸が弱い人は気にしすぎ」なのではなく、脳と腸が人一倍よく連携しているだけ、とも言えます。
「異常なし」なのに症状がある病気
| 状態 | 特徴 |
|---|---|
| 機能性ディスペプシア | 内視鏡で異常がないのに、胃痛・胃もたれ・早期満腹感が続く。日本人の約1割にみられるありふれた状態 |
| 過敏性腸症候群(IBS) | 検査で異常がないのに、腹痛と下痢・便秘を繰り返す。通勤・通学・試験など緊張場面で悪化しやすい |
どちらも「検査で異常がない=病気ではない」ではなく、診断名がつき、治療の選択肢がある状態です。生活の工夫に加えて、症状に合わせた薬もあります。一人で我慢する必要はありません。
通勤前の腹痛は、体からの手紙
特定の場面(出勤前、特定の人と会う前)に決まって症状が出るなら、それは体が「この状況が負担です」と教えてくれているサインです。薬で症状を抑えることと並行して、負担の正体――多くの場合は人間関係――を整理することが、根本的な改善につながります。
ただし、この症状があるときは必ず検査を
- 意図しない体重減少(1か月で4〜5kg以上)
- 血便・黒い便、繰り返す嘔吐
- 夜中に痛みで目が覚める
- 中高年になって初めて症状が出た
これらは「警告症状」と呼ばれ、ストレス性と自己判断してはいけないサインです。まず内科・消化器内科で検査を受けてください。