🌿 こころの相談室内科医コラム

「ストレスで胃が痛い」は気のせいではない――脳腸相関という医学

内科医 前川 出まえかわクリニック)|2026年7月5日

「胃カメラでは異常なしと言われました。でも胃が痛いんです」「大事な会議の朝は必ずおなかを壊します」――内科外来で毎週のように聞く訴えです。

検査で異常がないと「気のせい」「ストレスでしょう」で終わりにされて、傷ついた経験のある方もいるかもしれません。しかし医学的には、これは気のせいではなく、きちんと名前と仕組みのある状態です。

脳と腸は「専用回線」でつながっている

脳と消化管は、自律神経とホルモンを介して双方向に影響し合っています。これを脳腸相関と呼びます。緊張すると口が渇き、胃が締め付けられ、腸が過剰に動く――ストレスという「脳の事件」が、そのまま「腸の事件」になるのです。

逆方向もあります。腸の不調が脳に伝わり、不安や気分の落ち込みを強めることも分かってきています。「胃腸が弱い人は気にしすぎ」なのではなく、脳と腸が人一倍よく連携しているだけ、とも言えます。

「異常なし」なのに症状がある病気

状態特徴
機能性ディスペプシア内視鏡で異常がないのに、胃痛・胃もたれ・早期満腹感が続く。日本人の約1割にみられるありふれた状態
過敏性腸症候群(IBS)検査で異常がないのに、腹痛と下痢・便秘を繰り返す。通勤・通学・試験など緊張場面で悪化しやすい

どちらも「検査で異常がない=病気ではない」ではなく、診断名がつき、治療の選択肢がある状態です。生活の工夫に加えて、症状に合わせた薬もあります。一人で我慢する必要はありません。

通勤前の腹痛は、体からの手紙

特定の場面(出勤前、特定の人と会う前)に決まって症状が出るなら、それは体が「この状況が負担です」と教えてくれているサインです。薬で症状を抑えることと並行して、負担の正体――多くの場合は人間関係――を整理することが、根本的な改善につながります。

ただし、この症状があるときは必ず検査を

  • 意図しない体重減少(1か月で4〜5kg以上)
  • 血便・黒い便、繰り返す嘔吐
  • 夜中に痛みで目が覚める
  • 中高年になって初めて症状が出た

これらは「警告症状」と呼ばれ、ストレス性と自己判断してはいけないサインです。まず内科・消化器内科で検査を受けてください。